2017年06月 / 05月≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫07月

2017.06.09 (Fri)

チャイコフスキー 序曲「1812年」 シモノフ&ロイヤルフィル

シモノフ_1812

チャイコフスキー
序曲「1812年」op.49

指揮:ユーリ・シモノフ
   ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団

録音:1994.1 ロンドン、CTSスタジオ
レーベル:ロイヤルフィル

一連のロイヤルフィルシリーズの1枚、チャイコの管弦楽曲集の中の1曲です。
私が買った頃は数百円だったと思います。今もBOXとかであるようですが、
SACDなどでも発売されているようです。
録音はCTSスタジオとのことですがこのようなスタジオのようです。

7402364.jpg

録音はオケに近く響きはクリア。大ホールでオケが鳴るような感じではありません
が残響もスタジオにしては結構感じられるので少し編集されているかもしれません。
演奏時間は16:27。

冒頭の弦楽アンサンブルは粘り過ぎることはなく端正ながらも懐かしさと芯の強さを
感じる表情です。主部に入ってからもさほどテンポは上げずに重心の低い図太い響き
での進行。次第にテンポは少しずつ上がって中低音の金管(トロンボーン、チューバ)
でのメタリックで威圧的な降下フレーズなどはロシアの響きとはやや異なる感じですが
豪快でスケール十分です。
間の取り方も余裕があるもので5:38辺りの弦楽の旋律が入る前では、4・5秒ほどの
大きな休止が入ります。
また安定感のある丁寧な語り口ではあるものの6:59や10:55での弦楽の同じフレーズ
では急ブレーキを踏むようなクセのある表現がユニークです。
終盤はロイヤルフィルらしい金管の豪快な響きを開放していて威力は十分。
大砲の響きもオケをマスクするほどの過激さはないもののそれでもラスト近くになって
くると乱れ打ち状態でヒューヒュー音も鳴り響き、大砲なのか花火なのかもはや不明。
ラストの地響きのようなロングトーンの最後の瞬間にとどめの大砲をぶっ放すという
演出付きでなかなか面白いです。
終盤の演出はともかくオケの演奏自体は重厚なもので効き応えがあるものになって
います。

感銘度: A
( A+, A,  A-, B+, B )

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

00:35  |  チャイコフスキー  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2017.06.04 (Sun)

桐朋アカデミー・オーケストラ 特別演奏会 2017.6.3

桐朋アカデミー・オーケストラ 特別演奏会
2017年6月3日 富山市、オーバードホール
(ベルリンフィルハーモニー管弦楽団のメンバーを迎えて)

ヴァイオリン: アンドレアス・ブーシャッツ (ベルリンフィル コンマス)
ヴァイオリン: クリストフ・ストロイリ
ヴィオラ: ウルリッヒ・クノルツァー
チェロ: アンドレアス・グリュンコーン
フルート: アンドレス・ブラウ

指揮: パスカル・ヴェロ (仙台フィル常任指揮者、東京フィル首席客演指揮者)


パスカル・ヴェロ

(プログラム)
ロッシーニ: 歌劇「ウィリアム・テル」序曲
プッチーニ: 歌劇「マノン・レスコー」より第3幕間奏曲
ヴェルディ: 歌劇「運命の力」序曲
ベルリオーズ: 幻想交響曲op14

前半がイタリアオペラものですが、「ウィリアム・テル」や「マノン・レスコー」でのソロ
の部分はベルリンフィルのメンバーが担当していてメンバーの方のための選曲なのかなと
いう印象もしました。後半の幻想交響曲はヴェロさん得意のレパートリーです。

パスカル・ヴェロさんのことは長く東京フィルや仙台フィルの指揮者をされていること位
しか知らなかったのですが今回初めて生で演奏を聴くことができました。
フランス人ですが意外に小柄な方という印象ですが明快で的確なバトンは見応えがありま
した。

オケの編成は14型で配置は通常。幻想交響曲の2楽章でのイングリッシュホルンに呼応
するオーボエは舞台裏で通常の演奏パターンですが、5楽章での鐘も舞台裏で鳴らすのは
珍しい設定のような気がしました。(チューブラーベルでなく鐘のようでした。)指揮者の
好みでしょうか。

ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲
 開始の「夜明け」はさらりとしたチェロ(グリュンコーンさん)のソロで開始。速めの
 テンポでチェロセクションの爽やかな表情が印象的ですがソロの鳴りの豊かさは流石に
 格が違うなぁという感じ。「嵐」の部分はヴェロさんのグッと押し下げる左手に弦楽が
 機敏に反応。トロンボーンセクションのユニゾンでの8分音符の強奏もよく揃っていた
 と思います。「静けさ」は遅めのテンポでイングリッシュホルンやブラフさんのフルート
 がたっぷりと表現。有名な「スイス軍の行進」は幾分軽めのタッチですが切れ味良く
 躍動感を示し、ラストも短めに切り上げていました。

プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」より第3幕間奏曲
 冒頭からのベルリンフィルメンバーでの弦楽ソロの受け渡しは流石に生々しい響きです。
 「ウィリアム・テル」を聴いてヴェロさんの表現はわりとスマートで洗練された方向性
 なのかなと思いましたがこの曲では意外にロマンティックな雰囲気よりは重厚さに傾い
 た作りで主部に入ってからもあまり切迫した表情を作らずに落ち着いたテンポで丹念に
 鳴らしてゆく表現でした。中盤でのホルンはもう少し音量が欲しい気もしました。

ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
 冒頭の3音は短めに堂々たる提示。勢いに流されずに各フレーズが丁寧に扱われていて
 オーボエやフルートでの緩徐部などはかなり遅めの設定でしんみりとした気分よく示し、
 速い箇所でもメリハリのよく効いた表現で良かったと思います。中間部の金管アンサン
 ブルの箇所も美しい響きを聴かせていました。

ベルリオーズ:幻想交響曲op14
 フランス人であるヴェロさんにとっては得意のレパートリーだと思いますが、流石に
 ツボをよく押さえた表現で演出過剰な表情付けは皆無。どの楽章も妥当的なテンポ感
 をベースに明快な表現がなされ、こうあるべきという自信が感じられる音楽の進め方
 だったと思います。
 そのため第1楽章から第3楽章は幾分地味で表情付けにもう少し色つやがあってもと
 思う気もしないではないですが、安定感のある弦楽を筆頭に肝となる3楽章のイング
 リッシュ・ホルンのソロなども実に見事なものでした。
 第4楽章では雄渾な進行と劇的な高揚感が十分に感じられ、第5楽章では開始1分半
 位のテンポの速い急迫する箇所から諧謔的なクラリネットの部分に移る際、通常休止
 が入りますが、間髪空けずに入るのが興味深く感じられました。
 「怒りの日」のテーマからラストにかけても機動力のある金管セクションの充実した響き
 が豪快に鳴り渡り、見事な締め括りでした。

オケの方はベルリンフィル5名の他にホルンに大阪フィル、パーカスに新日本フィルの
方が入っていたとはいうものの全体に精度の高いアンサンブルや見事なソロを聴かせて
いて、大きな傷もなく前回よりも遥かに上手い演奏だったと思います。
お客さんの入りも9割以上の大入り。「運命の力」とか「幻想」は変なところで拍手が
入りそうな曲で少々ハラハラしますがこちらも事故なしでした。

秋のコンサートスケジュールも発表されていましたが、面白そうなプログラムだったので
掲載します。会場は全てオーバード・ホールです。

9月3日(日)14:00
     指揮:クリスティアン・アルミンク
        (2013年まで10年位、新日本フィルの音楽監督だった人ですね)
     ウェーバー:劇音楽「トゥーランドット」より序曲
     ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容
     ツェムリンスキー:交響詩「人魚姫」

10月20日(金)19:00
     指揮:円光寺雅彦
     協奏曲の夕べ(学内オーディションによるソリスト)曲未定

11月19日(日)14:00
     指揮:沼尻竜典
     モーツァルト:交響曲第35番ニ長調「ハフナー」
     モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調「トルコ風」
            ソロ:ライナー・キュッヒル(元ウィーンフィルコンマス)
     シューマン:交響曲第2番ハ長調

9/3のプログラムなんて富山では今後コンサートでは聞けない曲ばかりのような気が
します。楽しみです。

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

23:50  |  富山・金沢の演奏会を聴く  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.25 (Thu)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ヴェンゲーロフ&マズア&ゲヴァントハウス管

ヴェンゲーロフ_ブルッフ

ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調op.26

ヴァイオリン:マキシム・ヴェンゲーロフ
指揮:クルト・マズア
   ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

録音:1993.9 ライプツィヒ
レーベル:TELDEC

録音はソロ、オケともにやや近め。ソロはよくピックアップされクリアそのもの。
オケはたっぷりと大きく広がりますが、幾分くすんだ感じがします。会場はスタジオで
なくホール(ゲヴァントハウスのホール?)のようで残響も適度にありスケール感は
十分。
ヴェンゲーロフ19歳の時の録音になります、ヴェンゲーロフはその後2008年33歳の
頃に肩を壊して演奏活動から遠のいていたようですが近年再び演奏活動を再開している
ようです。

第1楽章 8:09
 冒頭のソロ部分は端正さがベースでさほど崩した感じは無く幾分レガートな開始。
 オケの全奏後、主部に入ってからは押し出しも強くなり若者らしい覇気とアグレッシヴさ
 が感じられます。しかしその語り口はケレン味や大仰さとは無縁、明快で洗練された響き
 の中に安定感とスケールあふれるダイナミックな表情を示しています。
 技術的にも高い技量ですがオケが咆哮する直前ソロの急激な上昇フレーズ(7:19)で一瞬
 スムースでない箇所があるのは惜しいです。(気にするほどでも無いですが)
 マズアのゲヴァントハウスは今よりもドイツ的な重厚さを備えていて時折強いアクセント
 を効かせ鳴り渡ります。

第2楽章 8:09
 テンポは中庸。落ち着いた表情で余計な物を付け加えたり引いたりすることはなく、
 自然に楽譜を語らせてゆきます。端正ながらも一音一音丹念に奏でてゆくその姿は
 凛とした美しいスタイルを持ち心地良い表現です。5分頃からは膨らみを強くボリューム
 感を持たせて壮大なオケの全奏へと繋げてゆきます。
 終盤7分台での弱音から次第に高揚して伸びやかな高弦での歌い上げも高らかで実に
 清々しいもの。オケの方でややホルンのフレーズを強く鳴らしているのはマズアの
 好みのようでサラ・チャン盤での録音と同様です。

第3楽章 7:28
 しっかりと地に足が着いた表現でテンポも中庸。若いわりに弾ける感じは意外に控えめ
 で主フレーズも16分音符の引っ掛けに聴こえる箇所も他の奏者ほど強調しないので
 流れが良く明快な発音と安定感のある進行です。2:35からの低音で奏でるフレーズも
 品のある音が美しく隙の無い充実した響きを聴かせます。こなれた表情はベテランの
 奏者が弾いているかのようなバランス感と充実した語り口で高揚します。

全体に美しいフォルムと鳴りきった爽快な音色が印象的な録音です。個性的な解釈と
いう訳ではありませんが19歳とは思えないハイレベルな仕上がりです。

感銘度: A
( A+, A,  A-, B+, B )

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

00:18  |  ブルッフ  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.19 (Fri)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ソネンバーグ&ワールト&ミネソタ管

ソネンバーグ_ブッフ_ヴァイオリン協奏曲

ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調op.26

ヴァイオリン:ナージャ・サレルノ=ソネンバーグ
指揮:エド・デ・ワールト
   ミネソタ管弦楽団

録音:1988.9 ミネアポリス、オーケストラ・ホール
レーベル:EMI

ミネアポリスのこのホールは音響の良いホールで知られています。この録音ではオケは
十分な量感と響きが感じられますが、ややくすんだ響きがEMI的でもう少しクリアさ
が欲しいところ。ただしソロの方は近めにピックアップされていてこちらは明快な響き
で録れています。ソネンバーグ27歳の録音。

第1楽章 9:34
 ソネンバーグの演奏は個性豊かなものが多いですがこのブルッフも非常に独創的です。
 ソロの入りの部分だけでもかすれるような長い弱音と遅い詩的な表情はこの演奏の全体
 をうかがい知る事ができます。オケの強奏の後のたくましいソロも粘着性の強い表現で
 演歌のようにこぶしをきかせて進行、この曲のイメージとはかなり離れた巨大な音像が
 示されここまでやるかといった感じですが、ゆったりと入念に語り上げてゆく信念の
 強さは徹底しています。ワールトもソロの音楽観に合わせてたっぷりと雄大なスケール
 で鳴らしています。

第2楽章 9:48
 開始からしばらくはかなりの微速前進でどうなることかと思いますがフレーズ後半
 からは中庸な感じに流れてゆきます。それでも叙情的な箇所になってくるとやはり
 テンポはゆるやかに。一音一音丹念に奏でられてゆきますが表情は濃厚過ぎることや
 押しが強すぎる事は無く、穏やかで優しい肌触りで歌い上げてゆきます。
 終盤のオケの高揚もじわりと盛り上げて厚く壮大に響きます。

第3楽章 7:31
 テンポは中庸、あまり急ぐ感じはありません。主部のフレーズも焦らずにソロは余裕
 のある落ち着いた語り口で明快。一般的な躍動感や熱気で一貫した表現では無く、時に
 ウィットな気分を持つ軽めで淡い表情を見せたかと思うと濃厚な深い響きを聞かせたりと
 多彩です。ややこねくり回したような変わった表現はどこか遊び心を持つ気ままなタッチ
 に聴こえたりしますが非常にユニークです。
 ラストはオケと共に焦らず強く堂々と締め括っています。

たぶんこの曲の録音の中では最も遅い演奏時間ではないでしょうか。
全体に多面な表情を聴かせる演奏で面白いものですがどこか散漫な気もしないでもありま
せん。例えばハイフェッツ辺りとはベクトルが逆の方向を向いているような感じで別の
曲のような雰囲気さえしますが、自分の音楽を強く貫くソネンバーグらしい録音です。

感銘度: A-
( A+, A,  A-, B+, B )

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

23:10  |  ブルッフ  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.16 (Tue)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 コーガン&マゼール&ベルリン放送響

コーガン_ブルッフ

コーガン

ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調op.26

ヴァイオリン:レオニード・コーガン
指揮:ロリン・マゼール
   ベルリン放送交響楽団

録音:1974.11.13-15 ベルリン、グリューネヴァルト教会
レーベル:DENON

コーガン(1924-1982)の50歳の録音。
年代にしてはややヒスノイズが感じられます。この録音では教会を使用しているため
残響は深く響き、広がりとボリューム感十分。オケの方は少々ダブ付く感じもする位で
もう少し芯のある音が欲しい気がしますが。ソロはよくピックアップされてクリアです。
ソロ、オケともにやや距離は感じられます。

第1楽章 8:01
 録音の傾向もありますが、コーガンの音は実に太く武骨な響きでオケの全奏の後に奏でる
 主題も豪快でたくましく響きます。ロシア人らしいと言えばそうですがどこか頑固親父
 が「こうやって弾くのじゃ」と言っているかのような堂々たる鳴りっぷり。
 音には常に強い芯があり、重音も分厚いですが単音も倍音が同時に鳴っているかのような
 音がします。語り口は大仰なものではありませんが、真に迫った迫力が感じられます。
 緩徐部も女々しくなることなく、しなやかさと伸びやかな音が美しいです。
 マゼールの伴奏もこの時期の表現はまだ淡白な時期に入る前で華と歌のある豊かな表現。
 もう少しパンチと機動力があってもとも思いますが教会の響きに影響された感がします。

第2楽章 7:50
 テンポは中庸ですがここでも滔々と響かせてゆくソロは力強い足取りが感じられます。
 さほど弱音への拘りは感じられず強い押し出しで太く高く歌い上げてゆく感じ。感傷的
 な部分も心の弱さは見せず(あえて見せないよう)に強い意志と格調の高さで聴かせて
 ゆきます。また強く伸びやかな語り口はロシア的なスケールの大きさを感じます。
 オケの方は残響が豊かなこともありムード十分。終盤のクライマックスも雄大に響き
 渡り、その後のソロも緊張感を失わない弱音を保ちます。

第3楽章 7:46
 テンポは中庸よりやや遅めな感じです。ソロはしっかりと地に足の着いた安定感のある
 もので一音たりとも疎かにすることなくくっきりとした縁取りのある音色で進行して
 ゆきます。熱気や躍動感に不足する感じはないものの弾けた気分はやや控えめです。
 その分大人の音楽ともいうべき風格を示していて、4:18頃の再現される主題の入りも
 強いアクセントが印象的に響きます。
 オケの拡散的な響きの録音はもう少し締まりがあればなぁとも思いますが、ソロを豊かに
 支えていて充実感のある響きを保ちつつ終結します。

コーガンのガッシリと構えた厚みのある音色と強い構成力がこの演奏から良く感じられ
ます。バリバリと弾く時期は過ぎた頃の録音かと思いますが、渋い風格のあるソロは
雄大な気分で聴かせてくれます。

感銘度: A ~ A-
( A+, A,  A-, B+, B )

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

00:03  |  ブルッフ  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.12 (Fri)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ハイフェッツ&サージェント&ロンドン新響

ハイフェッツ_ブルッフ

ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調op.26

ヴァイオリン:ヤッシャ・ハイフェッツ
指揮:サー・マルコム・サージェント
   ロンドン新交響楽団

録音:1962.5.14&16 ロンドン、ウォルサムストウ・タウンホール
レーベル:RCA

録音は年代も古いのでヒスノイズが入りますが聴くにつれて気にならなくなります。
それでも確かに弦の質感など少々年代の経過を感じるものですが、意外にしっかりと
した音でハイフェッツの音色の細部までよく感じられます。オケの方も細部まで質感
豊かとはいきませんがクリアで低弦も厚く聴きやすいものです。残響はやや控えめです
がデッドというほどでもありません。ハイフェッツ61歳の録音。

第1楽章 7:39
 冒頭からハイフェッツのソロは感傷的になる事は無く男気のあるさっぱりとした開始。
 テンポは速めで主部に入ってからもあまりフレーズを膨らませずに直線的に突き進む
 語り口でこの人ならでは。明快で高度なテクニックを披露しながら爽快でキレのある
 表情を作り出してゆきます。たくましい音色ですがさほど熱情的になる事は無く粘りも
 少なめで端麗。夾雑物を排したスタイルは流石で凄みを感じるものです。
 難なく弾いてゆき余力があるところが少々物足りない位のぜいたくな悩みを覚えるほど。
 オケも的確で無理は無く端正そのものです。

第2楽章 7:49
 この楽章はテンポはほぼ中庸。引き締まったソロは甘くなることもケレン味とも無縁。
 細かめのヴィブラートは仄かに感傷的な気分を感じますがキレの鋭い高弦や図太く直線
 的に響く低弦は率直そのもので無駄が無く職人的な表情と技を聴かせます。
 あまりに整然と整理されている音楽は個人的にはもう少し叙情味が欲しくなりますが、
 6分以降の深い表情は真実味があり美しいものです。

第3楽章 6:29
 テンポはかなり速めの設定(ハイフェッツの演奏としては普通の感覚だが)。主題も実に
 キリリと引き締まった明快さで前進性が強くオケを引っ張るように豪快に進行してゆき
 ます。テンポも次第に加速してゆく感じです。テンポが上がっても常に冷静な視点が感じ
 られフォルムが全く崩れないのはこの人らしいところです。
 緩徐部も粘りは少なく抑制的なものですがラストに向けて十分な高揚を見せ、密度の高さ
 を保ちつつ終結となります。

今となってはやや時代を感じる演奏でもう少しカロリーや油っ気が欲しい気もしますが、
妥協の無い高い技量と痛快な表情、筋肉質の美しいフォルムは爽快そのもので、この曲の
録音の中でも規範となる演奏だと思います。

感銘度: A ~ A-
( A+, A,  A-, B+, B )

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

23:08  |  ブルッフ  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.08 (Mon)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 五嶋みどり&ヤンソンス&ベルリンフィル

五嶋みどり_ブルッフ
輸入盤

midori2.jpg
国内盤

輸入盤を保有していますが、暗いジャケットのせいか
国内盤では明るい雰囲気に変更されています。

ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調op.26

ヴァイオリン:五嶋みどり
指揮:マリス・ヤンソンス
   ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

録音:2002.1.18&19 ベルリン、フィルハーモニーホール
レーベル:SONY

録音はフィルハーモニーの空間を良く感じさせるもの。特に聴衆ノイズも消していない
感じですし、編集臭もしないので製作側にはライブの雰囲気を伝える意図があったの
かもしれません。距離感は適度ですがオケの分厚い響きがかなり強烈で若干飽和気味。
ソロは埋もれずによくピックアップされています。五嶋みどり30歳の録音。

第1楽章 8:24
 冒頭のソロは気だるいレガートな入りに少々驚かされますが、オケの豪快なトゥッティ
 後は一転、ソロに力がみなぎります。熱い感情のこもった語り口はライブのせいなのか
 は分かりませんが強弱やフレーズの溜めなどかなり自由さを持った表現で随所に強い
 主張と意志が感じられます。またソロフレーズの入りの前にブレスする音がたまに
 聴こえるのはみどりさんなのでしょうか?
 ヤンソンスのベルリンフィルはやけに編成が大きく聴こえて豪勢な音。立派過ぎる程の
 伴奏ですが要所のアクセントも良く効いていてスケール大の表現です。

第2楽章 9:18
 テンポはかなり遅い設定。一音一音じっくりと入念に歌い上げてゆきます。特に強弱の
 表現の幅は大したもので繊細な弱音から伸びやかにホールに強く響きわたる高音まで
 緊張感を良く保って奏でてゆきます。特に5分過ぎからのフレーズは瞑想的な雰囲気も
 感じるほどの深い響きとロマンティックな表情がかなり濃厚に示されています。
 人によっては重過ぎると感じる人もいるかもしれません。
 オケとのクライマックスもジリジリと盛り上げて雄大な頂点を築いています。また8分
 過ぎからの弱音の表現も実に念入りなもの。

第3楽章 7:32
 ソロは主フレーズの16部音符にやや粘りがあり力のこもったボウイングです。ライブらしい
 勢いと力感がそのままに示されていて、張りの強い音はやや粗い位にも感じますが豪快に
 鳴らしてゆきます。また2:32辺りからの低弦のフレーズも実に力強いです。
 オケも鳴り過ぎなくらいの分厚さと豪快さでソロとともに熱気と躍動感あふれる高揚を
 盛り上げてゆきます。ラストの強い追い込みも見事。
 終演後の聴衆の盛大な歓声と拍手も録音されていますが、なるほどと思います。

この演奏を聴くと五嶋さんはやはりライブで本領を発揮されるように思います。
繊細な感性と深い響き、閃きが随所に感じられる録音です。
富山には一度だけヤンソンス&バイエルン放送響と来たことがあり生で聴いたことが
あります。その時はシベリウスでしたがやはり集中力の高い表現が印象的でした。

感銘度: A
( A+, A,  A-, B+, B )

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

23:58  |  ブルッフ  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.06 (Sat)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 リン&スラトキン&シカゴ響



チョーリャンリン
最近のリン

ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調op.26

ヴァイオリン:チョーリャン・リン
指揮:レナード・スラトキン
   シカゴ交響楽団

録音:1986.2.21&25 シカゴ、メディナテンプル
レーベル:SONY

キョンファに続いてアジア系の奏者を続けて聴いてみます。
チョーリャン・リン(1960生)は台湾出身。80、90年代に録音がいくつかあったように
思いますが、最近も現役で活動されているようです。

録音はヴァイオリンを過剰にピックアップしている感じはなく、オケともソロともに自然
な距離とバランスになっています。ホールの残響も適度で艶のある録音です。
リンが26歳の録音。

第1楽章 8:08
 冒頭のソロは過剰に感傷的だったり大げさになるような事はなく、しなやかなフォルム
 と美しい響きを形作ります。主部に入ってからも艶やかな流れとスマートな表情をベース
 にしていますが、伸びやかな歌と弾力の効いたしなりを織り込み、清涼感のある心地良い
 語り口です。スラトキンのシカゴ響はショルティの時代ですが幾分硬質の厚みのある
 弦楽などはやはりこのオケらしいところ。5:20頃からの伴奏だけの箇所などは急迫する
 速いテンポをとり豪快なスピード感を聴かせるのが独特の表現です。

第2楽章 8:21
 テンポは中庸。ソロは端正な表情で強い主張はありませんが、滑らかで自然な流れは
 無理がなく、この楽章本来の穏やかで心地良い表情を作り出しています。
 語り口も淡々としている訳ではなく伸びやかな歌謡性が感じられ、しなやかな音色を
 楽しめます。
 後半のクライマックスも音が膨張するような事は無く、オケの引き締まった音と爽快な
 ソロで若々しい仕上がり。

第3楽章 7:01
 くっきりとした弦楽伴奏の序奏からソロに移りますが、やや速めのテンポに乗って
 キレと躍動感十分に奏でてゆきます。ソロも過剰に強いアクセントを付けるような事が
 ないので全体にリズムや表情に勢いが感じられます。
 シカゴ響もバネの効いた伴奏で呼応していてこの楽章に相応しい弾けた開放的な
 フィナーレとなっています。

全体にソロ、オケともに颯爽と洗練された演奏スタイルで過剰な表情や情念とは無縁の
さわやかな音楽作りが楽しい。テクニックも見事なもので心地良い演奏です。

感銘度: A ~ A-
( A+, A,  A-, B+, B ) 

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

10:33  |  ブルッフ  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

2017.05.04 (Thu)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ケンペ&キョンファ&ロイヤルフィル

キョンファ_ブルッフ

ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調op.26

ヴァイオリン:チョン・キョンファ
指揮:ルドルフ・ケンペ
   ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団

録音:1972.5 ロンドン、キングスウェイホール
レーベル:DECCA (LONDON)

録音は少々古い時代になってきましたが、キョンファの豪快なソロを良く捕らえて
います。ヴァイオリンはやや近くオケは適度な距離感で左右に大きく広がるスケール
のある録音です。強奏時のクリアさは年代相応という感じです。
キョンファ24歳の録音。

第1楽章 8:17
 若い頃のキョンファの演奏は鋭角的でパンチの効いた表現が多いですが、このブルッフ
 でも主張は強く、冒頭の一音だけでも強く響かせた低音が強い緊張感を感じさせます。
 ケンペのオケもトウッティで入る箇所など強いアタックが効いていて豪快そのもの。
 主部のヴァイオリンソロは力のこもったボウイングと燃えるような表情は尋常でない
 エネルギーを発散、多少のピッチや荒れ具合も強い熱気で突き進んでゆきます。
 弱音でも張り詰めた気分は休まることはなく終始高いテンションを維持して何かに
 取り憑かれたような集中力に驚かされます。
 ケンペの作る表情もいつも以上にテンポの伸縮や溜めが感じられ、またソロに対峙する
 ような勢いと厚みを持っています。アンサンブルは必ずしも良くはないですがホルンの
 強奏などこのオケらしい響きが感じられます。

第2楽章 8:37
 2楽章の入りの部分は十分に音を伸ばして気分を変えています。ようやく落ち着いた感じ
 になりますが、キョンファの表情は太く厚い響きで艶やかさよりは響きの張りや押しの
 強さが前面に打ち出され、弱音においても芯の強い音楽で進めてゆきます。また後半での
 強奏時にはきしむような響きはやはり凄みが効いています。テンポは幾分ゆったりとして
 強く歌い上げてゆきます。

第3楽章 7:13
 ここでもアクセントの強いボウイングが印象的でフレーズの扱いも音符をやや短めに
 切り上げて表現しています。キレの良さはもちろんですが、2:35頃の低音で響かせる
 箇所の図太い響きも豪快です。オケの強力な響きにも負けるところ無く躍動感あふれる
 パワーと勢いを発散してゆきます。
 ケンペも活力十分ですが細部の変化と配慮が感じられる伴奏になっています。
 ラストの追い込みもオケ、ソロともに鋭くまとめあげられ爽快そのもの。

この曲のイメージからするとかなり強面で激しい気質が出過ぎているような感じも
しますが、このような体当り的な表現は今聴いても他には無く圧倒されるソロです。

感銘度: A
( A+, A,  A-, B+, B )

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

01:01  |  ブルッフ  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2017.04.29 (Sat)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 マズア&チャン&ドレスデンフィル

チャン_ブルッフ_no1

ブルッフ
ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調op.26

ヴァイオリン:サラ・チャン
指揮:クルト・マズア
   ドレスデンフィルハーモニー管弦楽団

録音:2009.5.15&16  ドレスデン、聖ルカ教会
レーベル:EMI

録音はヴァイオリン、オケともにかなり近く目前に大きく展開します。特にヴァイオリン
はかなりピックアップした感じで実演ではありえないようなバランスですが、音色の細部
まで繊細に聞き取れます。ルカ教会での録音で残響も豊かなものですが、響き過ぎること
は無く、直接音を中心に再現されます。

第1楽章 7:55
 楽譜では冒頭ad libitum(自由に)となっているのでソリストの個性が強く示される箇所
 ですが、チャンの演奏はf指定に拘らず震えるようにかすれた音色とゆったりと哀愁
 漂う語り口が印象的です。主部に入ってからは艶のある音色と強いしなりとうねりを
 持たせた激しい起伏は独特で強く引き付けられます。燃焼度の高さと力感は同郷の
 チョン・キョンファ(サラ・チャンは韓国系アメリカ人ではあるが)を思い浮かべます
 が、チャンもかなりのめり込むような集中力を感じます。
 オケはややダンゴ気味になるところはあるもののスケール感は十分。マズアの指揮
 は堅実なものですが次第に熱くなってゆき、7:15辺りではマズアがあおるように
 唸っているのが聴こえてきます。

第2楽章 7:42
 かなりヴィブラートの強い弾き方で神経質な表情が感じられる表現ですが、音楽の
 流れは悪くありません。ヴィブラートがどこか心の震えのようにも聴こえ、繊細かつ
 大胆な響きは入念さと多彩な響きを作り出しています。
 終盤では遅いテンポ設定の中、伸びやかに高弦でのフレーズを歌い上げてゆく箇所も
 美しいものです。

第3楽章 7:02
 ここでもチャンの音色の豊かさは素晴らしいもので躍動感と溌剌さに満ちた表現を
 繰り広げます。主部のキレと艶やかさ、また2分台での渋みのある厚い雄弁な音から
 華やかな軽やかな響きまで見事なものでテクニックにも余裕が感じられます。
 オケの厚い響きも効果的で豊かな音楽性が示されます。ラストの追い込みも痛快で
 豪快に締め括ります。

録音の主張がやや強い感じもしますが、チャンのしなりとうなりで聴かせる熱いヴァイ
オリンは確かに個性的でこの曲の録音の中でも聴き応えのある一枚だと思います。
何だか1楽章などはどこか二胡の響きにも似たような感じに私は聴こえました。

感銘度: A
( A+, A,  A-, B+, B )

テーマ : クラシック ジャンル : 音楽

23:30  |  ブルッフ  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
 | BLOGTOP |  NEXT